2026年6月、240億件ものID・パスワードがネット上で誰でも見られる状態になっていた、というニュースが流れました。数字が大きすぎて実感が湧きませんが、「同じパスワードを使い回していると、どこか1か所の漏洩から全部やられる」という話は、もう脅しではなくなっています。
そこで注目されているのが、パスワード管理アプリの1Password(ワンパスワード)です。サービスごとに別々の長いパスワードを自動で作り、覚えておくのは1つだけでよくなります。
私は製造業の総務兼システム部でIT担当をしながら、ブログを6年続けています。WordPress、サーバー、ASP、Googleのツール類と、ブログまわりだけでもログイン先は数十あります。1Password自体はまだ使っていない立場なので、公的な統計と公式情報をもとに「なぜ今必要とされているのか」「本当に払う価値があるのか」を整理しました。
この記事で分かること
- 2025〜2026年の情報漏洩・不正アクセスがどれだけ増えているか(数字つき)
- 1Passwordの需要が伸びている理由と、ブロガー・副業の人が特に気をつけたいアカウント
- 1Passwordの料金・機能と、無料ツールとの違い(デメリットも含めて)
「自分みたいな小さいブログが狙われるわけない」と思いがちですが、攻撃する側は人を選んでいません。漏れたID・パスワードを機械的に片っ端から試してくるだけです。
2026年、情報漏洩はもう「他人事」ではなくなった
まずは、ここ1〜2年で何が起きているのかを数字で確認しておきます。どれもニュースや公的機関の発表で確認できるものです。
240億件のID・パスワードが丸見えになっていた(2026年6月)
2026年6月、セキュリティメディアのCybernewsの調査チームが、パスワードもかかっていないデータベースを発見しました。中身は約240億件・8.3TBのログイン情報。ユーザー名、メールアドレス、ログイン先のURL、そして暗号化されていない平文のパスワードまで入っていました。
出どころは、パソコンに感染して保存済みのパスワードを抜き取る「インフォスティーラー」というマルウェアのログや、過去の漏洩データの寄せ集めです。データベースは数日で閉じられましたが、一度流れたリストは犯罪者の間で出回り続けます。
ちなみに240億件には重複も含まれるので、「240億人分が漏れた」わけではありません。ただ、長く同じパスワードを使っている人ほど、このどこかに自分の情報が入っている可能性は高くなります。
国内の不正アクセスは前年から約3割増の7,190件
警察庁・総務省・経済産業省が2026年3月に公表した資料では、2025年(令和7年)の不正アクセスの認知件数は7,190件。前年の5,358件から約34%増えています。
注目したいのは手口です。2025年に検挙された不正アクセス431件のうち、407件は他人のID・パスワードを使ってログインする「識別符号窃用型」でした。9割以上が、システムの穴を突く高度なハッキングではなく「正しいID・パスワードで普通にログインされた」ケースです。
2025年には証券口座の乗っ取りが相次いで大きなニュースになりましたし、インターネットバンキングの不正送金もまだ多い状況です。IPAの「情報セキュリティ10大脅威 2026」個人編でも、「インターネットバンキングの不正利用」が4年ぶりに選ばれました。
上場企業の漏えい人数は1年で約2倍の3,063万人分
東京商工リサーチの調査によると、2025年に上場企業とその子会社が公表した個人情報の漏えい・紛失事故は180件。件数こそ前年より少し減りましたが、100万人を超える大型事故が6件あり、漏えいした人数は3,063万人分(前年比93.1%増)と約2倍に膨らみました。
自分がどれだけ気をつけていても、使っているサービス側から漏れることは防げません。防げるのは「漏れたあとに被害を広げないこと」だけです。
1Passwordの需要が伸びている3つの理由
漏洩が増えたことと、パスワード管理アプリが選ばれるようになったことは、きれいにつながっています。理由は大きく3つです。
理由1:使い回しが、そのまま乗っ取りにつながる時代になった
漏れたID・パスワードのリストを使って、ほかのサービスに次々ログインを試す攻撃を「リスト型攻撃(クレデンシャルスタッフィング)」と呼びます。1か所で漏れたパスワードをほかでも使っていると、全部まとめて開けられてしまいます。
対策はシンプルで、サービスごとに別のパスワードにすることです。とはいえ、数十個のランダムな文字列を人間が覚えるのは無理があります。ここを肩代わりしてくれるのが1Passwordのようなパスワード管理アプリです。
理由2:パスキーや2段階認証で、管理するものが増えた
最近はパスワードを使わずに指紋や顔認証でログインする「パスキー」に対応するサービスが増え、証券会社や銀行でも2段階認証の必須化が進んでいます。安全にはなりましたが、パスワード、パスキー、ワンタイムコードと、管理するものはむしろ増えました。
1Passwordはパスキーの保存にも、2段階認証のワンタイムコードの表示にも対応しています。スマホ機種変更のたびに認証アプリの移行で慌てる、といった手間を減らせるのも選ばれている理由です。

理由3:ブラウザ保存だけだと、端末やブラウザをまたぐと不便
ChromeやSafariにもパスワード保存機能はあり、無料で十分使えます。ただ、「会社のPCはEdge、家はChrome、スマホはiPhone」のように環境がバラバラだと、保存先が分かれてしまいがちです。
1PasswordはWindows・Mac・iPhone・Android・主要ブラウザで同じ保管庫を使えます。先ほどのインフォスティーラーはブラウザに保存されたパスワードを狙うことが多いため、パスワードをブラウザとは別の暗号化された保管庫に置いておきたい、という需要もあります。
ブロガー・副業の人ほどパスワード管理が欠かせない理由
ブログを運営していると、気づかないうちにアカウントが増えていきます。ざっと棚卸しすると、こんな感じです。
- WordPressの管理画面(サイトの数だけ)
- レンタルサーバー・ドメイン管理(エックスサーバーなど)
- ASP(A8.net、もしもアフィリエイト、バリューコマース、Amazonアソシエイト、楽天アフィリエイト)
- Googleアカウント(サーチコンソール、アナリティクス、AdSense)
- SNS(X、Instagram、YouTube)、note
- 画像素材サイト、Canva、AIツール、有料プラグインの購入サイト
この中で特に乗っ取られると痛いのが、ASPとサーバーです。ASPには報酬の振込先口座が登録されていますし、サーバーやWordPressを乗っ取られると、何年もかけて育てた記事が改ざんされたり、スパムサイトに作り変えられたりします。
会社で総務とIT担当をしていると、「パスワードを付箋でモニターに貼る」「Excelのパスワード一覧をデスクトップに置く」といった管理方法をよく見かけます。どちらもその場では便利ですが、PCが1台やられたら全部持っていかれる管理方法です。ブログのアカウントを1つのメモ帳ファイルにまとめている人は、同じ状態だと思ってください。
ブログを始めた頃に登録したまま放置しているASPやツール、意外と多くないですか?昔のパスワードのまま残っているアカウントほど危ないです。
1Passwordでできること(主な機能)
1Passwordは、カナダの1Password社が提供しているパスワード管理アプリです。基本は「保管庫(Vault)にログイン情報をまとめて、ブラウザやスマホで自動入力する」ツールで、主な機能は次のとおりです。


画像出典:1Password公式サイト
| 機能 | できること |
|---|---|
| パスワード生成 | サービスごとに長くてランダムなパスワードを自動で作る |
| 自動保存・自動入力 | ログイン時に保存を提案し、次回からワンクリックで入力 |
| Watchtower | 漏洩が確認されたパスワード、使い回し、弱いパスワードを知らせる |
| パスキー対応 | パスキーを保存し、端末をまたいで使える |
| ワンタイムコード | 2段階認証の6桁コードを表示・自動入力できる |
| トラベルモード | 海外渡航中、指定した保管庫を端末から一時的に隠せる |
| 共有(ファミリー) | 家族と共有用の保管庫を作れる(最大5人) |
ブロガー目線でいちばん効くのはWatchtowerです。登録しているパスワードが過去の漏洩データに含まれていないか、使い回していないかを一覧で教えてくれるので、「どこから直せばいいか」が分かります。

公式の画面例では、スコアの下に「パスキーに切り替えられるサイトが4件」「2段階認証を設定していないサイトが6件」のように、次にやることが数字で並びます。漏洩チェックだけでなく、パスキーや2段階認証への切り替え漏れまで拾ってくれるのは、自分でExcelに一覧を作るやり方ではまず真似できない部分です。
セキュリティ面では、マスターパスワードに加えて「Secret Key(シークレットキー)」という34文字の鍵を組み合わせて暗号化する仕組みです。1Password社のサーバーからデータが盗まれても、この2つがなければ中身は読めない設計になっています。
1Passwordの料金プラン
個人向けは「Individual(個人)」と「Families(ファミリー)」の2つ。買い方は、1Password公式サイトでドル建ての年払いにするか、ソースネクストで日本円の3年版を買うかの2通りです。まずは公式の料金です(2026年10月時点)。
| 項目 | Individual | Families |
|---|---|---|
| 通常料金(年払い) | 月3.99ドル(年47.88ドル) | 月5.99ドル(年71.88ドル) |
| 円換算の目安(1ドル150円) | 年約7,200円(月600円前後) | 年約10,800円(月900円前後) |
| 利用人数 | 1人 | 最大5人 |
| 端末数 | 無制限 | 無制限 |
| 無料体験 | 14日間 | 14日間 |
2026年10月時点では、公式サイトで最初の12か月が25%オフ(Individualは月2.99ドル、Familiesは月4.49ドル)になるキャンペーンが出ています。無料体験はクレジットカードなしで始められます。
ドル払いが不安な人向けには、ソースネクストが日本円の「1Password 3年版」を販売しています。中身は公式版と同じで、購入後に届くライセンスキーを入力すると3年間使えます。
| 項目 | 3年版 1人用 | 3年版 5人用 |
|---|---|---|
| 通常価格(税込) | 17,980円 | 27,980円 |
| セール価格(10月26日まで) | 14,980円 | 24,980円 |
| 1年あたり(通常価格) | 約5,990円 | 約9,330円 |
| 公式(1ドル150円換算)との差 | 年約1,200円安い | 年約1,450円安い |
| 無料体験 | なし | なし |
| 3年後 | 買い直し | 買い直し |
3年分を円で先払いするので、途中で円安になっても追加の負担はありません。そのかわり、ソースネクスト版には無料体験がなく、返金保証の「安心サービス」も対象外です。最初の1年だけで比べると、公式の25%オフのほうが安くなる点も知っておいてください。
2026年10月12日時点では、ソースネクストで1人用が3,000円引きの14,980円になるセールをやっています(10月26日まで)。1年あたり約5,000円なので、3年使うつもりならこのタイミングが買いどきです。
使い勝手が不安なら、公式の14日間無料体験で触ってみてから決めるのが確実です。ソースネクストの案内では、購入後に1Passwordのアカウントの「作成・引継ぎ」ページへ進む流れになっています。
1Passwordを選ぶ前に知っておきたいデメリット
良いところばかりではありません。契約してから「思っていたのと違う」とならないよう、引っかかりやすい点を3つ挙げておきます。
無料ではなく、しかもドル建て
1Passwordには無料プランがありません。2026年3月には料金改定もあり、Individualは年47.88ドルになりました。ドル建てなので、円安が進むと実質の負担も上がります。月600円前後をどう感じるかは人それぞれですが、「無料のブラウザ保存で十分」という人がいるのも事実です。為替が気になるなら、円建てで3年分を先払いできるソースネクスト版を選ぶ手もあります。
マスターパスワードとSecret Keyをなくすと取り戻せない
安全性の裏返しで、1Password社は利用者のマスターパスワードを知りません。Individualプランでマスターパスワードを忘れ、Secret Keyも手元にない状態になると、保管庫の中身を取り出す方法がなくなります。
登録時に作られる「Emergency Kit(緊急キット)」のPDFは、印刷して紙で保管しておくのがおすすめです。Familiesプランなら、管理者が家族のアカウント復旧を手伝えます。
最初の移行と、パスワードの変更が地味に大変
ChromeやSafariに保存しているパスワードは取り込めますが、本当に安全にするには、使い回しているパスワードを1つずつ変更する作業が必要です。アカウントが数十個あると、半日つぶれることもあります。
一気にやろうとせず、Watchtowerで「漏洩あり」と出たものと、ASP・サーバー・Googleなどお金や資産に関わるものから順番に変えていくと続きます。
「全部1か所にまとめたら、そこが破られたら終わりでは?」という不安もよく聞きます。だからこそマスターパスワードは長く、ほかでは絶対に使わないものにして、2段階認証もかけておきましょう。
無料のパスワード管理と比べてどうなのか
パスワード管理は1Passwordだけではありません。代表的な選択肢を並べると、こうなります(◎=特に強い、○=対応、△=条件付き)。
| 比較項目 | 1Password | Googleパスワードマネージャー | Apple パスワード | Bitwarden |
|---|---|---|---|---|
| 料金 | 有料(年47.88ドル〜) | 無料 | 無料 | 無料プランあり |
| Windows・Mac・iPhone・Android | すべて対応 | ○ Chrome経由で対応 | △ Apple製品中心 | ○ すべて対応 |
| 漏洩チェック | ○ Watchtower | ○ パスワードチェックアップ | ○ 漏洩の警告あり | △ 一部は有料プラン |
| パスキー | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 使いやすさ | 日本語UI・自動入力が丁寧 | ○ 普段のChromeのまま | ○ iPhoneなら設定不要 | △ 少し慣れが必要 |
| 向いている人 | 端末がバラバラ・アカウントが多い | Chromeだけで完結する | Apple製品だけで完結する | 無料で本格的に管理したい |
Chromeだけ、iPhoneとMacだけで生活が完結しているなら、無料のブラウザ保存でも「使い回しをやめる」目的は十分果たせます。1Passwordにお金を払う意味が出てくるのは、会社PC・自宅PC・スマホで環境がバラバラな人や、副業でアカウントが数十個ある人です。
オープンソースのBitwardenも評判の良い選択肢です。無料で使える範囲が広い一方、画面の分かりやすさや自動入力の細かさは1Passwordに分があります。
1Passwordが向いている人・向いていない人
向いている人
- ブログ・副業でASPやツールのアカウントが20個以上ある
- 会社PC・自宅PC・スマホでブラウザや端末がバラバラ
- 家族のパスワードもまとめて管理したい(Familiesプラン)
- 2段階認証のコードやパスキーも1か所にまとめたい
向いていない人
- Chrome、またはApple製品だけで生活が完結している
- 月600円前後でも払いたくない
- マスターパスワードとEmergency Kitをきちんと保管する自信がない
ブログのセキュリティはパスワードだけでは終わりません。WordPressの管理画面への不正ログイン対策は、サーバー側の設定でもかなり変わります。
よくある質問(FAQ)
- 1Passwordに無料プランはありますか?
ありません。公式サイトには14日間の無料体験があり、クレジットカードなしで始められます。ソースネクストの3年版には無料体験がないので、試してから決めたい人は公式の無料体験を先に使ってください。
- 1Password自体から情報が漏れることはありませんか?
リスクがゼロのサービスはありません。ただ1Passwordは、マスターパスワードとSecret Keyの2つで暗号化する仕組みで、仮にサーバーのデータが盗まれても、それだけでは中身を読めない設計です。マスターパスワードを使い回さないことが前提になります。
- Chromeに保存しているパスワードは移せますか?
移せます。Chromeからパスワードを書き出して1Passwordに取り込めます。書き出したCSVファイルにはパスワードが平文で入っているので、取り込みが終わったらすぐに削除してください。
- パスキーが普及したら、パスワード管理アプリはいらなくなりますか?
当分はいります。パスキーに対応していないサービスはまだ多く、しばらくはパスワードとパスキーが混在します。1Passwordは両方を同じ保管庫で管理できるので、移行期間の受け皿として使えます。
まとめ:漏洩は防げない。だから使い回しをやめる
2026年6月の240億件の流出、国内の不正アクセス7,190件(前年比約34%増)、上場企業の漏えい3,063万人分。数字を並べると、自分の情報がどこかで漏れている前提で動いたほうが現実的です。
漏洩そのものは利用者には防げません。できるのは、1か所漏れても被害がそこで止まるように、サービスごとに別のパスワードにしておくことです。1Passwordの需要が伸びているのは、その「別々のパスワード」を現実的に回せる道具だからです。
ブロガー・副業の人なら、まずはASP、サーバー、Googleアカウントの3つだけでもパスワードを変えておくと安心です。管理しきれないと感じたら、1Passwordを検討してみてください。円で払いたい人、3年以上使うつもりの人にはソースネクストの3年版が合っています。

